『青の物語』 ユルスナール著 吉田可南子訳

『青の物語』
ほとんど習作に近いものだが、ヨーロッパから来た商人達が洞窟でサファイアを得て、艱難辛苦ののちにヨーロッパへ帰り、サファイアを手放すという物語であるが、何かの長篇の下書きのようである。

『初めての夜』
スイスへの新婚旅行でレマン湖に近いホテルに逗留するというだけの物語だが、夫の心理描写がすべてである。風景と内心が絡み合った文章が延々と続くのだが、このスタイルは後の『ハドリアヌス帝の回想』へ発展するのだろう。だが、この一人の人物の内心に深く立ち入ることにこだわるのは、この著者の特徴だが、何が動機になっているのか興味深い。

『呪い』
三作中、最も小説らしい構成になっている。
一人の女性が病気になり、知人・友人が集まるのだが、それは民間呪術師によって呪いの元を探るためである。その中の一人が魔女だと分かるのだが、魔女とされた女性は次第に自分の力を自覚してゆくところで終わっている。この自覚の過程が読み応えがある。
この著者は内からほとばしる熱情を理知的に表現するという変わった得意技があり、これにハマると他の作品も全部読みたくなってくる作家である。